【自作詩】世界を切り開く日

処女は一度経験を持つと 処女ではなくなるが

人は一度世界を経験しても 世界がなくなることはない

ぼくは目の前の世界の ずっと 処女だから

果てしなく 今 ここにいることだけで 緊張してしまう

言葉を発すること

それは いつもいつも

真新しい世界との出会いを

最初の単語で切り開こうとすること

ぼくはいつまで経っても 今いる世界に慣れることがない

だからぼくは

レジで初めてのバナナを買うのも

カフェでジンジャーエールを頼むのも

どんなときも あらゆる瞬間において、

目の前に立ち現れる艶めいたガラスの世界へと

切り入ろうとして吃るのだ

言葉が微細に揺れ動くということ

世界を 自分の弱々しいknifeで

一番目の切り口を生み出そうということ

処女は一度経験を持つと 処女ではなくなるが

人は一度世界を経験しても 世界がなくなることはない

ぼくはここに広がる世界を前にして 半透明な処女になるのだから

永遠に ここにいることだけで 緊張を引きずりつつ吃ることを味わい

やがてこの世界に慣れ果てる日が来れば 言葉そのものを失うのだ