【詩】実験台

自分も変わるし
相手も
そして
世の中も変わって行くのだから、
やがてお互いの居心地や距離感や方違えの相性が
悪くなることもある。

でも、それはきっと、
二十歳を過ぎても小学校を卒業しなかったらとイメージするのと同様、
ありがたく手放す他ない。

地平線まで執着せず、
水平線まで利他に徹する。

やがてあなたとは離れていくのだなということをしっかり心に刻み込むために、
今日もあなたへ会いに行くのである。

会うたびに温度は変化し、
それをすべて気分のせいだと片付けて、
知らないふりをするのも、
決めるのはあなたとわたしのあいだの、
酸素と窒素と二酸化炭素の純情なる割合なのである。

あなたからの突き刺さるようなコトバを溶かすだけの十分な塩酸を持たず、
わたしは受け取って保管していくだけのシャーレを実験台に積み重ねる。

実験の途中だったのだ。
あるはずのない細胞を生み出そうと真剣に向き合うように。
その時間だけが、
その汗の結晶のみが、
あるはずのない細胞を
あるべき姿に変える。