【自作詩】血臭の森

殺し
殺され
殺されて
殺し尽くして
串刺しにされた無数の人生があって
その尖端にわたしがいる

血の臭いは
第二次性徴期の木訥な性癖を興奮させ
思春期で覆い隠す
教育の果て

わたしは
確かな街道を歩いたことがない
知り尽くした森を縦に移動することもない
ただすべては周回して
右へ左へ
ひだりへみぎへと
虚ろなからだとこころが
横へ

隠れたいのだ。と、

人から溢れ出る血にはいくつかの種類があるから
上から下から
横から斜めから
吹き出る血は
何重にも折り畳まれて串刺しにされた
私の生と性

興奮することが悪なら
矯正することが善となる

そんな下らないことのためにわたしは
始まりも終わりもない山脈の中を
横に移動してきたというのか

人生が一つでないのなら
わたしのいま生きている時間はすべて圧縮空気のように
わけのわからないものへと変化していく

人生が無数にあるから
わたしは
ビルに囲まれていても
森の中で泣く

きのうとあすがまったくないように
わたしの人生は今立っている一点にしかなくて

わたしは血に染まった両手を唇にそっと着けて
嗅覚から色褪せ尽くした興奮を得る

秋雨がわたしの人生をあらいながしていく
そして
なにも持たなくて
なにも持たない ということすら
持たなくさせてくれる