5月になると、学生の頃、ゴールデンウィーク明けは調理実習の季節だったことを思い出す。
小5の調理実習に向けて猛特訓
小学5年生のときだったか、新学期が始まり、家庭科の授業の中で「3週間先に調理実習をする」という話を聞いた。
献立はサラダとスープ、そしてオムレツ。
当日、どうしてもオムレツをきれいに焼きたいと思った私は、同居していた祖母にきれいなオムレツの焼き方を教えてもらうことになった。
フライパンを良く熱して油を入れる。
溶き卵をさっと入れたら素早く菜箸でかき混ぜる。
頃合いを見てフライパンの向こう側から少しずつ手前へ卵を寄せていって、形をラグビーボールのように整えていく。
ぽんとひっくり返す。
しばらくの間、毎晩のようにオムレツが食卓に並ぶことが続いた。
買ってもらった鉄のフライパン
ある日曜日、祖母がデパートに連れて行ってくれた。
せっかくオムレツの特訓をしているのだからと、南部鉄器の24㎝ほどの鉄フライパンを買ってくれた。
子供にはなかなか重たかった。
取っ手も鉄でできていたので、毎回布巾で握らなければならない。
でも、祖母によると鉄のフライパンは火の感覚を覚えるのに良いという。
新しい鉄のフライパンは焼き慣らしをして油をなじませる必要がある。
空焼きともいうそうだ。
オムレツを焼いて、終わったら必ず少量の油を垂らして手入れすることも教わった。
何回も練習を重ねて、毎回同じようなオムレツが焼けるようになった。
調理実習当日は自分の中で完璧とも言えるくらいの美しいオムレツが焼けた。
青春の一コマを支えてくれたフライパン
そのフライパンは大学で一人暮らししている4年間、自炊で活躍した。
卵料理やチンゲンサイの肉炒めをはじめ、近年幅をきかせているテフロン加工されているフライパンにはないおいしさがあった。
毎回、料理した後は油で手入れをしていたものの、年数が経つにつれて焦げるようになり手放してしまった。
それでも5月、ゴールデンウィークが開けて調理実習をしていた日のような晴れた空を見ると、祖母が買ってくれた鉄のフライパンのことを思い出してオムレツを焼きたくなってくる。