聖クララ教会の立つ高台を降りたところに与那原バス停があって、接続よく首里方面へのバスに乗ることができた。
6時半を過ぎた頃であったがそろそろ薄暮となり、バスが首里駅あたりまで来るととっぷり日も暮れた。
首里城へと向かって
バスの路線は那覇市内と南城市を結ぶ幹線道路を進む。
車社会という沖縄だが、ちょうど金曜の帰宅ラッシュで渋滞していた。
首里駅の最寄り、鳥堀バス停で下車する。
飛行機と与那原までの往復、さらに陽射しの強い沖縄の夕方に歩き回ったせいで体も疲れていたが、やはり沖縄初日、今日の締めくくりには首里城の気がして暗い住宅地を歩いて行った。
たしか、首里城はライトアップがされているはずだと思いながら公園の裏口らしき石畳まで来ると、真っ暗ななか眼前に照明に浮かび上がる首里城の雄姿が見えてくる。
日本の城というと石垣の上に立つというイメージだが、首里城は石垣に囲まれて、石垣の波に浮かんでいる独特の姿だった。
有料ゾーンの観覧は7時までだったので歓会門をやり過ごした。
守礼之門と国比屋武御嶽石門
沖縄そして琉球王国のシンボル、守礼之門を写す。
夜間のわりに観光客が集まっていた。
門近くの倉庫のような建物が国比屋武御嶽石門であって、東御廻り第一番目の聖地である。
琉球王府の行事や王の旅立ちにはここで必ず祈願が行われたという。
ちょっと気をつけていないと通り過ぎそうになるし、観光客は素通りするだろう。
門の奥に見え隠れする杜に神がおわすといわれているらしい。
腰をかがめてお参りをした。
暗闇に輝く少女
帰りは首里駅の一つ那覇寄りである儀保駅まで歩くことにした。
時刻は7時半。
すっかり夜になっていて看板などもわからずスマホの地図を確認しながら坂の続く住宅街を行く。
途中、バス停があり何とか那覇市内まで一本で行けないかとバス待ちの女子高生に尋ねてみた。
振り返った少女は、とても素朴な声で丁寧に那覇までの行き方を教えてくれた。
沖縄の初日に出会うべくして出会ったような、大変印象的な少女だった。
部活で日焼けしたのだろうか、ゴーギャンの絵に登場するような南国系の濃い顔立ちで、暗闇に彫りの深いくっきりした目と大きな歯が白く光っている。
お礼を述べて立ち去りながら、青い海のように澄んだ彼女のオーラのおかげで、すうっと沖縄の空気が腹へと素直に入って行った心地がした。
旅のスタートで琉球の巫女がささやかに遣わしてくれた見えない旅への露払いのような気がして、旅から帰った後も時々思い出し遠い空に向かって感謝している。
暑い那覇の一日目の夜はオリオンビールと幸せの小さな出だしとともに更けて行った。