【詩】私小説

小説を書くことを避けて
エッセイを書くことばかり続けていると
自分の欺き方だけがプロ級にうまくなった

小説に私を付ければ
まさしく
私が書きたい自分だけの真実を世の中の事実とできるから

大音量のスピーカーを流す
改造車が走り抜ける暗い通りを
一緒に横切ろうとして

「気が合うことと
好きだということを
混同したらだめだ」

と表情を変えずにささやいた
年上のあなたは
忘れた頃に
私の小説のインクを送ってくる

若者は
<性>を支配することができると考えるし
<性>を飛び越えることもできると考える

でもやがて
生きることが
生きていることを超えていくとき
私はまた
あなたから
見えないインクを受け取る

匂い立つような色気を
サイズのわずかばかり大きな
コートで覆い隠すように
2歩先を歩いて
見えない匂いがあることを教えてくれた

私はけっして
あなたの小説は書けない

私の小説は
自分の匂いでもう息ができないくらい
今日が苦しくなったら
明日にでも
書こう